逮捕された女 留置所での生活~1日目~

Xデーは、突然やってきた。

 

実家に住む、37歳の女。子供1名。中学生。両親の4人暮らし。

会社員。

 

出勤しようと準備をしていたら、部屋に父が来た。

「警察が来てるぞ」

 

ガサ入れだ。

 

心あたりはあった。7ヶ月前に職質を受けていた。当時の交際相手が原因だった。

 

部屋を5人程の刑事が調べる。車も調べる。

 

私はひたすら煙草を吸っていた。「よく吸うね」と言われた。

「吸い貯め」と答えた。

 

Yシャツを着ようと準備していたので、服を着替えさせて欲しいと頼んだ。

ダメだと言われたけど、ブラもしてないしと言ったら許してくれた。

女性の刑事が家の中でもピッタリとくっ付いた。

 

ああ、自由が無くなったのだと、少しずつ理解した。

 

会社に連絡させて欲しいと言った。これもダメだとの事。

【接見禁止】との令状を出された。

 

無断欠勤はさすがに勘弁して欲しいと、親から私の携帯の発信履歴の1番上にいた、当時交際もしていた相手に連絡を許してもらった。

こんな事になるかもしれないと話していたので、察知してくれると思った。

刑事は、親に「入院と伝えて下さい。軽い罪なので」と言った。

 

現金を7千円握りしめ、お薬手帳と診察券、アイコスを手提げ入れに入れて、家の前にとめられていた車に乗った。

 

手錠は車の中でしてくれた。

 

私の横に、女の刑事が1名座る。着替えの時にピッタリとついていたまだ新人と思われる若い女性に、1番上司のような年配の男性刑事が、

 

「逮捕した事あるか?」と尋ねた。女は、首を横に振った。

「やってみるか?この令状を読み上げて」と、なにやら研修のような事が始まった。

 

「人の逮捕を練習台にするな」

と言うと、「いや、誰でも初めてはあるだろう?」と言われたので、

「あんた、人生初の逮捕、一生覚えてろよ」と女に言うと、なぜか強張り、結局説明をし、カチャリと手錠をはめたのは、その年配のおじさん刑事だった。

 

車で警察へ向かいながら、だんだん不安と焦りが沸いてきた。

パニック発作が起き、ワーワーと泣きわめき、過呼吸になった。

 

警察署につくと、駐車場は10人はいたのではないか。グルリと人が壁になっている。

もしも、走りだそうもんなら凄いタックルが飛んでくるのだろう。

 

一人の男の刑事がバカにし、煽ってくる。ウザい。。

 

取調室に入り、少し話をした後、写真や指紋を取り、尿の提出を求められた。

 

その後、留置所に連れて行かれた。

 

所持品検査の後、全裸でてるてる坊主のようなマントを着せられ、ケガなどがないか、ピアスはあるか、タトゥーの有無などを細かく確認され、膣に何も無いか軽くスクワットをさせられた。

 

コロナの関係からか、少年房の一人部屋に入れられた。

 

少年房は5部屋しか無かった。

 

食事はお弁当だった。小さい穴からマットが渡され、その上に置いて床で食事をする。

 

不味い。

 

洗面をする際も、呼ばれたら後ろを向いてドアの前に立ち、また呼ばれたら洗面台に向かい、石鹸、歯ブラシなどの道具を全部出して、水を出しっぱなしにしないなど細かく注意を受けながら行う。

 

タオルは三つ折りにし、字が見えるようにかけるなど、全て決まりがあった。

 

布団は日本昔話のようにペッタンコのせんべい布団。枕は真四角で硬い。

掛け布団はぶ厚かった。

 

私はひたすら無言で不貞腐れた態度だったと思う。←これが、後々私の中での【留置所に入って4日間の中二病】だという事に気づく事となる。