逮捕された女 留置所での生活~2日目~
朝は6時に起床。
「起床!!!!!」と大きな張りのある声と共に、電気がパンパンと付いていく。
その声に続き、看守が「おはよ~」と気怠そうな声で言いながら部屋に近づいてくる。
布団を畳む。半分にして三つ折りだと昨晩言われていたが、それは掛け布団のみだった。
若い看守が「間違ってるし」と、何とも意地悪な言い方をしてきた。
突然の逮捕、原因の男の逃走などを聞いた翌日の為、私もすこぶる機嫌が悪い。
今にも「このクソガキ、マニュアル持って来んかい!」と叫び散らしそうになるのをグッと堪えた。
黙って耐えるが、謝らない。まだ、【留置所に入って4日間の中二病】を発症中の、1.5日目程だ。
布団を置くと、持ち手を短めに切られたホウキを渡され、部屋の柵にかけられた雑巾を2個持って中に入る。
ホウキで部屋を掃き、ドアの前にゴミを固める。
一部屋づつ、「〇号解錠!掃きだーし!」と言われ、ドアが開いたら廊下にゴミを掃き出し、そこを雑巾で拭く。鍵をかけられる。
その後、畳を雑巾で拭いて、トイレを拭く。
洗面をし、運動と言われたが、屋外で運動と言っても壁があり、屋根が少しだけ空いている場所でくしを借りて髪をとかすくらいしかしない。
くしに髪が付いてないかを目をこらしてチェックし、確認してもらう。
1本でもあればダメ出しが入り、必死で取る。
そのくしを消毒してもらうが、使いまわしなのが気持ち悪い。
爪も運動の時間に切れる。なぜか、男性用のシェーバーもある。
物凄く気になったが、最初はそこまで聞く事はできず、部屋に戻った。
ちなみに、2ヶ月半もいたので、後に髭剃りについて質問した。
私の予想は、短い髪の人が襟足でも剃るのかと思っていたが、まさかの髭剃り用だった。
女が丸が三個付いてるようなシェーバーで髭を剃るのか…
青くならないのか…と疑問でいっぱいだった。
華麗に「キレテナーイ」と言ってみたかったが、残念ながら私の口元にはそのような毛は生えなかった。
昼食を食べると、お出かけと言われ、部屋から出された。
手錠をかけ、腰に縄をしめる。
廊下を歩くのも、逐一、赤い線では壁に向かって止まる。
許可が出たら、歩き出す。
「女子通りまーす!」と大声を出され、やっとの事で出口に。
刑事に縄を託され、エレベーターも壁を向き、地下に着くと、車のドアを開け、今からデートにでも行くのかと思わせる紳士っぷりな雰囲気を出した担当刑事が待っていた。
なぜか目の奥が悲しそうだ。
警察署へと向かった。
車の中は世間話のような雰囲気で、普通に会話をしてくれた。
手錠をかけた上司デカが癒してくれる。声が落ち着く。きっと色んな人間の相手をしたのだろう。
私を転がすなんてチョロいのだ。
私はこの人に懐ききった。へそ天だ。
担当の刑事は若く、優しかった。
「何でもっと早く来てくれなかったの?殺されかけたよ。通報メール、無視されたよ。
警察はダメだと諦めて、麻取と話してた。
男のガサ、実家に行ったの?バカ?逃がしてんじゃない。捕まえてきてやろうか?」
と、職質からの話をした。
調書をまく際、毎回いちいち、「私は刑事さんから供述拒否権がある事を説明してもらい、理解しました。」などの定型文を読まれる。
「はいはいはい。ところでさ、何で自分の作った文なのに、刑事さんってさん付けなの?」
と、どうでもいい質問をしたりした。
「当番呼んで」と、逮捕前に調べていたセリフを言って、国選弁護士を呼んでもらった。
来たとの事で接見室に行ったが、開けると弁護士の姿は無かった。みんなでひっくり返った。
30分後に再び現れた弁護士は、Tシャツで扇子をあおぎながら、特にアドバイスも無く、被疑者ノートを入れとくと言った。
私の機嫌が悪くなると、へそ天上司デカが来る。
私はすぐ素直になる。昨日、馬鹿にし煽ってきた刑事の事はオニギリと呼んで、おはよー!と言われても、プンッとしていたが、後にこのオニギリ刑事に助けられる事となった。
それは、また後日書こう。
要するに、私は単純なのだ。
帰りも、上司デカが留置所でやっていい事、悪い事、その他質問に全て答えてくれた。
そうして2日目が終わっていった。